◇あらすじ
「ハ、ハジメマシテ……ボク、《ダイケル・ビーマンゴー》トイイマース。ヨロシクオネガイシマース……!」
今日、我が家に新たな留学生がやってきた。
●●ができない代わりに、ホームステイとして留学生を受け入れるようになって早数年。
今回は少数民族の《ディコン族》の青年とのことだった。
「美月さーん、他に手伝うコトありますかー?」
見た目はゴツいものの、勉強熱心で気配りもできる気の優しい青年。
言葉を覚え、コミュニケーションも問題なく取れるようになってきた。
しかし、そんな矢先……ちょっとした事件が起こる。
「……おうぅっ、おうっ! おうっ! おうっ!」
こちらが何度ノックしようとも、相手からの応答はない。
その代わりに、部屋の中からは獣のような咆哮が轟いていた。
どうやらその発声はダイケル君によるもので間違いないが、
切羽詰まった様子が扉越しからも伝わってくる。
(大丈夫かしら……もしや、発作を起こしているとか……?)
不安が過り、いてもたってもいられなくなる。
悪いとは思いつつも、返事のないまま部屋の中へと進入を試みた――。